恣翁さん
のうた一覧
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北国の短き日をし 霧包み 厨に灯り さてや点さむ
令和三年十一月十四日
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条幅を飾りたる間に 花魁の吹かす煙管の雲居いざよふ
令和三年十一月九日
12
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窓外を後ろへ過ぎる街はまだ 眠りの足らぬ寝惚け面かも
令和三年十一月四日
13
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蒼褪めて立ち尽くしたり 雨に濡れ 機械油に汚れたる顔
令和三年十月三十一日
13
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夕暮れの空気を裂きて 打つ飛礫 暗く濁れる川面に消えぬ
令和三年十月二十八日
13
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テーブルにこぼれたる火酒 くちなはに似て 我が前へ這ひ寄らむとす
令和三年十月二十六日
9
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銃身の 黒ずむ鈍き光こそ 生命の最後の詩を奏せめ
令和三年十月二十一日
9
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何故に掻き遊めるか ティーカップ 冷めし紅茶の香も尽きぬるを
令和三年十月十九日
8
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ポキポキと 指の節をば鳴らしつつ 啜る珈琲の味のなきこと
令和三年十月十七日
9
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右膝に 左の脚を重ねつつ 肘突く拳 頭支へけり
令和三年十月十六日
6
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仕舞ひたる卓にや 去るを惜しむがに 鱗のやうな灰留まれる
令和三年十月十日
12
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過ぎ去りし時代の香り 萎びたる乳房のままに 踊るアルテミス
令和三年十月三日
11
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輪郭に圧さるるごとく 背を曲げて 入り日に向かふ移住者の群れ
令和三年九月三十日
13
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秋の日の はや傾ぶくを 尋ね居る我が師の墓標 見つからざらめや
令和三年九月二十四日
17
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秋の日は 毛氈に咲く花がらに 刹那の生命を与へたるかも
令和三年九月十六日
12
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ドビュッシーのアラベスクこそ 木漏れ日の煌めきに似て 葉陰に揺るれ
令和三年九月十四日
9
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苔むせる築石の間 暗くして 顔覗かする羊歯 そこかしこ
令和三年九月八日
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雨垂れのやうな響きの沁むるかな エリック・サティの沈鬱の酔ひ
令和三年九月四日
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煮出したる麦茶沸きしを 火に掛くる薬缶の蓋ぞ そっと切りける
令和三年九月二日
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夜更くるを蒸せば 蚊を追ふ団扇にて風を入るるも 寝返りを打つ
令和三年八月二十九日
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