美津村さん
のうた一覧
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配達終れば心ゆるみてトラックの排気の匂ふ倉庫をとざす
平成二十九年三月二十二日
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蒸し暑く空気の淀む倉庫開け積み荷してあるトラックを出す
平成二十九年三月二十二日
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トタン屋根を落葉の吹かるる音の下居残りて煉瓦に縄をかけゐる
平成二十九年三月二十二日
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光は既に夕焼けて水平に差す倉庫居残りてなほしばし煉瓦積む
平成二十九年三月十九日
9
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手術後の点滴に汗吹きいでて右頬赤く妻眠りをり
平成二十九年三月十九日
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手術室を出でくる妻を我は待つ和英の聖書置かれし部屋に
平成二十九年三月十九日
11
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入院する妻を置きて我が帰りながく絶ちゐし煙草をふかす
平成二十九年三月十九日
8
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湯玉浴びし服の焦げ穴繕ふに慣れたる妻よ我に来て九年
平成二十九年三月十九日
12
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鋳込み終へ鋳物師去りし鋳込場の梁に野鳩のくぐみ鳴く声
平成二十九年三月十二日
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湯気と埃に暗く熱気のこもる中けもののごとく鉄鋳る裸体
平成二十九年三月十二日
9
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鋳造ラインに並びて働く人の腕いづれも等しき角度に動く
平成二十九年三月十二日
9
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耕耘機で鋳込場の土ほぐしゐる兼農の君も背の曲りゐる
平成二十九年三月十二日
11
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杓三つ寄せ合ひ一気に鉄注ぐ三人共に呼吸を止めて
平成二十九年三月十日
10
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気おくれして言ひ出せず帰らむとする我を呼び止めて煉瓦の注文くれぬ
平成二十九年三月十日
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ひび割れて形くづれし厚き爪よ素手で土打つ老鋳物師は
平成二十九年三月十日
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日当りのよき窓際に年老いし鋳物師は腰を曲げて土打つ
平成二十九年三月十日
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今朝早く配達に来て土つよく匂ふ鋳込場に煉瓦を降す
平成二十九年三月十日
8
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一人の部屋にひとり眠るに慣れし子が未明厠に起ちてゆく音
平成二十九年三月七日
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うれしくも悲しくもなき表情で嫁ぎ来し日の汝を忘れず
平成二十九年三月七日
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折り込みの分譲広告ながくかかり見てゐしが妻は厨に去りぬ
平成二十九年三月七日
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