千葉 甫さん
のうた一覧
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窓開けて入れた夜の風、卓上の日記のページを繰る無遠慮に
平成二十九年六月二十二日
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一滴顔に触れたる雨のある仰いだ空はまだ明るくて
平成二十九年六月二十一日
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思い出は過ぎる時間に濾過されて年々歳々美しくなる
平成二十九年六月二十日
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この夜更け窓に灯点る、この間一人住まいの人逝った家
平成二十九年六月十九日
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夕光を漂って来た草の絮漂い続けてわが視野の外
平成二十九年六月十七日
6
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昨夜から雨、雨、雨の暗い午後 色生きいきとあじさいの花
平成二十九年六月十六日
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今ここに私一人の夕暮れに梅の実一つ地に落ちた音
平成二十九年六月十五日
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真夜中に覚めて明るい窓を見た隣の人の死を昼に知る
平成二十九年六月十四日
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陽の光り揺らめく梅の繁葉に色づき始めた実の二つほど
平成二十九年六月十三日
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ストロベリー・ムーンの上っている頃の空を転がる雷の音
平成二十九年六月十二日
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一羽行く鴉のビルのてっぺんで一休みしてまた先へ行く
平成二十九年六月十日
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切断で残る幹から小さい枝突き出して葉の緑耀く
平成二十九年六月九日
6
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人かげを見ることのない二階家の窓の一つに夜は灯点る
平成二十九年六月八日
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点滅の信号の下真夜中の猫のあるいて行く悠然と
平成二十九年六月七日
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信号に塞き止められて次々と点るブレーキ・ライト見下ろす
平成二十九年六月六日
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子燕の顔いっぱいに口を開ける親の頭を呑みこみそうに
平成二十九年六月五日
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張り紙のある閉店の店のドア開店中より人の眼を呼ぶ
平成二十九年六月三日
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窓の外横切らないで折り返し去った燕を眼の隅に見る
平成二十九年六月二日
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梟の声の移って行く先を耳で追いつつ夜は更けてくる
平成二十九年六月一日
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五年目が間近な空家の表札に並ぶ二人の故人の氏名
平成二十九年五月三十一日
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