冬野 凪さん
のうた一覧
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子殺しと云ふ言葉ふと浮かぶとき毛穴に潜む蟲らざわめく
平成二十三年十一月二日
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大人には理解できない儀式ありみどり児だけの秘密の記号
平成二十三年十一月二日
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おねしよと云ふ言葉に魅入られたる三十五の男闇を識る
平成二十三年十一月二日
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傍らのジム・ビーム・ライの空瓶がしみじみ語る故郷の風を
平成二十三年十一月三日
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灯台できみと暮らしたいと伝へたがよりよい返事もらへず笑ふ
平成二十三年十一月六日
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溶け出したサティのレコードかけてみたら向かひのをばさんハミングしだす
平成二十三年十一月十二日
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凄まじき腋臭の臭ひに猫が逃げ妻にも逃げられ青葉買ふなり
平成二十三年八月四日
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腋臭にはミョウバン水が効きます。
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凄まじい癖毛の男現れてともに海へと繰り出さうと云ふ
平成二十三年八月四日
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水溜まりへ金魚放つ誘惑に負けさうになる三十五の夏
平成二十三年八月六日
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窓際に佇んでゐる猫がゐる月を見てゐるのか月に見られてゐるのか
平成二十三年九月十三日
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プランテーションの無意味さを知るや否や彼は農園に火を放つた
平成二十三年九月二十日
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カンパリの赤は太陽の色素だよと云ひし友はカンパリ嫌ひ
平成二十三年九月二十五日
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肩を抱く敗残兵の胸に棲むあの雲雀は屍になつた
平成二十三年十月二十日
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冬の朝数学者の見た夢は水洗トイレの水とともに消える
平成二十三年十月二十日
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わが妻の命令口調なメモ書きはそこら中でまぶしく光る
平成二十三年十月二十三日
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バリケード築ゐた後の高揚感敵は政府に非ず我が子だけど
平成二十三年十一月三日
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晴れた日に天上から落ちてきたどんぐりはいま娘に食はれた
平成二十三年十一月二十二日
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方眼紙ひとつひとつを塗り潰す仕事有ります時給五百円です
平成二十三年十一月二十六日
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眞夜中にしやしやり出てはつきまとふ困つた猫だまめのすけくん
平成二十四年一月九日
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床鳴りの激しい家だ猫がゐて子がゐて妻がゐない昼間だ
平成二十四年一月九日
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