詠み人知らずのお気に入りの歌一覧
恣翁
樟脳は 箪笥に潜む 思ひ出を 引き出すごとく 漂ひにけり
25
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恣翁
紫に 腫れて緊まりの なき唇に 笑み仄見ゆる 会心の負け
11
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恣翁
縮緬の 月映す面に 浮く島は 銀盤の上の 巻貝に似る
17
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恣翁
水底に 月輝けど 細波の 痕一つだに 水面にあらず
19
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恣翁
夜の静寂 破る口笛 風に乗り 空しく屋根を 越えて消えゆく
23
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恣翁
シャンパンを 次々と抜く 音に似る 打球響けり テニスコートに
20
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恣翁
ブラウスの 円き胸なる ブローチの 生気に満ちて 光放てり
22
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恣翁
舌先に 果実と種子を 探るごと 豊かな尻ぞ 睨め回しける
17
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恣翁
静脈を 微かに浮かせ 薄光る 丸き乳房を 鷲掴みたし
17
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恣翁
美しき 侮蔑を帯びし 横顔を 見せてモデルの 蒼褪めて立つ
22
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恣翁
土間に鳴く 蟋蟀の声 屋根の上に 昇り消えゆく 星月夜かな
22
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恣翁
銀河落ち 鶏鳴く朝に 散歩して 頭掻きつつ 徒食侘びたり
19
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恣翁
都人の 底意地悪き 振りにこそ 鼻につく自負 潜みたんめれ
12
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恣翁
水底の ゆらゆら動く 藻の森に 泡吐き月を 仰ぐ蟹達
22
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恣翁
恐らくは 疫病神は 気の弱い 太宰のやうな 顔をしてゐる
23
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恣翁
居酒屋の 赤提灯の 胴かすめ 一条の雨 斜に光りぬ
22
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恣翁
木犀の 甘き香りに 誘はれて 芋洗い居る 水車見つけつ
16
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恣翁
秋祭り 振舞ひ酒に 酔ひ痴れて 子に肩貸され 家路を辿る
22
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恣翁
商店の 巻かれし日除け 往来の 水たまりにぞ 寒く映れる
17
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恣翁
読み残す 書を閉ぢ灯火 吹き消して 床で聞き入る 雨垂れの音
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